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応用生態工学
Online ISSN : 1882-5974
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日本における河川環境の保全・復元の取り組みと今後の課題
池内 幸司金尾 健司
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2003 年 5 巻 2 号 p. 205-216

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抄録

頻発する水害に効率的に対応するために,河道の直線化,定規断面化,河道の固定化,コンクリート護岸の整備等が進められ,治水上の観点からは一定の効果は上がったものの,その代償として河川環境や景観に大きな影響を与えてきた.このような状況に対して,1981年の河川審議会の答申において,治水,利水,河川環境が全体として調和がとれるよう河川環境管理を行うことの重要性が謳われた.1990年には,「多自然型川づくり」の推進について通達が出され,「河川が本来有している生物の良好な成育環境に配慮し,あわせて美しい自然景観を保全あるいは創出」する「多自然型川づくり」がパイロット的に実施され,全国各地で様々な試みがなされた.1997年には,河川法が改正され,法の目的に「河川環境の整備と保全」が位置付けられた.これを受けて,「多自然型川づくり」の本格的な実施,各種基準の改定,自然共生研究センターの設立など,河川環境の保全・復元に関する施策がより一層積極的に推進されている.
これまで行われてきた多自然型川づくりの事例は,河岸域の保全・復元,限られた区間の河道形態の保全・復元,河畔林の保全・復元,地先の河川改修工事を行う際の環境影響の軽減など,河道の限られた部分に視点を置いた事例が非常に多かった.河川全体の自然環境保全の視点から策定された河川計画の先駆的な事例(北川(宮崎県),乙川(愛知県))を紹介した.
既往の人為的な影響で損なわれてしまった河川・湖沼・湿地等の自然環境を再生することを主目的とした自然再生事業(2002年度制度創設)の考え方とその内容について述べた.
多自然型川づくりの果たしてきた役割について考察を行うとともに,河川環境の保全・復元に関する今後の課題について論じた.

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