2016 年 45 巻 3 号 p. 146-154
滋賀県は環境基準の達成と非達成の境にある重要な地域にもかかわらず,PM2.5の実態把握が遅れている. 本研究では,2013年から2014年にわたり滋賀県瀬田丘陵にてPM2.5と粗大粒子PMCの捕集と無機イオン成 分の分析を行った.PM2.5にはSO42-とNH4+が大半を占め,PMCはNa+やCa2+等陽イオン成分が多かった. PM2.5中のNH4+とSO42-には強い相関が見られた.NH4+と非海塩硫酸塩nss-SO42-の濃度変動は基本的に連動 していたが,2013年夏は桜島噴火と高温・弱風の影響でnss-SO42-濃度が大きな値を示した.NH4+/nss-SO42- の観測期間中の平均値は0.79であり,沖縄県辺戸岬の0.56よりも高く,大津市街地の1.32より低かった. これらの値の違いは国内のNH4+の発生源や大津市街地における自動車排ガス等の局地的なNH4+の発生源の 影響によると考えられる.