決算
エヌビディア（Nvidia）のジェンスン・フアン最高経営責任者（CEO）。
Slaven Vlasic/Getty Images for The New York Times; Chelsea Jia Feng/BI
スイス金融大手UBSの最新分析によれば、次世代AIチップに対する堅調な需要を背景に、エヌビディア（Nvidia）の株価上昇は当面続く模様だ。
同社は7月8日付の顧客向けメールで、エヌビディアの12カ月後目標株価を120ドルから150ドルへと引き上げたことを明らかにした。
同社アナリストのティモシー・アーキュリ氏は、サプライチェーンに関する直近の調査結果を踏まえ、｢Blackwell GPUを搭載したラックスケールシステムに対する需要の勢いは引き続き極めて堅調｣と指摘する。
｢Blackwell（ブラックウェル）｣は、エヌビディアが2024年下半期に市場投入する計画の次世代アーキテクチャで、絶大な人気を誇る現行｢Hopper（ホッパー）｣の後継。次世代アーキテクチャを採用したGPU（画像処理装置）は｢B100｣および｢B200｣と呼ばれる。
B200を2個、CPU（中央処理装置）の｢Grace（グレイス）｣を1個接続したプロセッサが｢GB200 Grace Blackwell Superchip｣。それを36個搭載したラックスケールのシステムは｢GB200 NVL72｣と呼ばれ、大規模言語モデルの推論処理実を現行製品の約30倍速で実行できるという。
UBSのアーキュリ氏は次のように説明する。
｢ハイパースケーラー（＝100万台以上のサーバーリソースを保有する企業）の2025年予算が固まり、ラックスケールシステム『NVL72/36』のパイプラインは、ほんの2カ月前と比べても大幅に増加しており、2025年のEPS（1株当たり利益）5ドルは実現可能と考えます｣
UBS予測に従って2025年のEPSを5ドルとすると、予想株価収益率（PER）は25.6倍と計算される。S&P500種株価指数の予想PERは22倍程度で、そこにエヌビディアの圧倒的な成長速度を加味すれば、バリュエーションが高すぎるということはないだろう。
なお、ウォール街の他の大手金融機関の見立てはアーキュリ氏とはだいぶ異なる。
証券会社などセルサイドのコンセンサス予想では、エヌビディアの2025年のEPSは3.62ドルとされており、その場合の予想PERは35倍となる。
｢（上記のような）全てを踏まえれば、（引き上げ後の）150ドルという12カ月後目標株価は正当化し得ると考えられます。
バリュエーションのベースを2025年のEPSから2025年および26年の平均EPSへとロールフォワードした上で、投資判断は引き続き『買い』とします｣
また、ここ数週間で株価をめぐる｢不安の壁｣が高くなってきていることも、エヌビディア株のさらなる値上がりを期待させる好材料だ。
足元の弱気な（値崩れの）不安が堅調な業績を背景に強気な見通しへと転じれば、株価上昇に拍車が掛かることになる。
｢エヌビディア株に関する市場センチメントはまだ強気ですが、ここ数週間でいくらか後退しており、いわゆる『不安の壁』が高まっています。当社による（株価上昇の）見通しが今後実現するなら、このセンチメントの変化は極めて健全と言うべきでしょう｣
なお、ウォール街の大手金融機関が軒並みエヌビディアを強気とする中、英投資会社ニューストリート・リサーチ（NewStreet Research）は7月5日、バリューチェーンに関する調査をベースにアップサイドは限定的と判断し、投資判断を｢買い｣から｢中立｣に引き下げている。
