日本
OECD全体での総雇用は2021年末に危機以前の水準に戻り、2022年初め数カ月も継続して堅調であった。失業率は2020年4月にOECD全体で8.8%のピークを記録してから徐々に下落し、2022年7月には4.9%になった。これは2019年12月に記録した5.3%よりも若干低い値である。にもかかわらず、労働市場の回復は国やセクターごとに濃淡があり未だ不完全である。回復の持続性についても、ロシアの理不尽、不当かつ違法なウクライナ侵略による経済の悪化によって雲行きが怪しくなっている。
日本の労働市場は、COVID-19危機下で失業率と就業率の変動がともに限定的で著しいレジリエンスを示した。しかし、総労働時間に大幅な下落が生じており労働市場の回復も精彩を欠いている。失業率はピークの3.1%から2022年7月には2.6%に改善したものの、危機以前の水準よりもまだ0.4ポイント高い。また、2022年第1四半期の総労働時間は2019年同期比で5%以上低いままであった。
15歳以上の就業率はほとんどパンデミック以前の水準に戻りつつある。ここには、女性労働者の就業率がパンデミック以前の水準を超える回復をしているのに対して、男性労働者の回復は鈍化しているという内情がある。回復基調におけるジェンダーの差は、部分的には日本の長期的な人口動態トレンドを反映したものである。男性労働者の数はここ二十年間減ってきており、男性の就業率はこの間におよそ70%でほとんど頭打ちになっている。他方で、女性の就業率はここ十年間大幅に上昇してきており、日本全体の就業者数および就業率を下支えしている。
日本では女性の雇用を支援する国内法が最近続いている。2022年7月から女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)の改正によって、常時雇用する労働者が301人以上の企業には男女の賃金格差の開示義務が発生する。昨年は、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)が改正されたことで、育児休業の利用拡大が図られ男性向けの育児休業の枠組みが新たに追加された。家事・育児における男女格差を是正すること、男女ともに育児休業の利用を向上させることが女性の労働供給を増進するための鍵となるであろう。
OECDの加盟国の間では総じて求人数が記録的水準に達しており、多くの国やセクターで人手不足の報告が相次ぐようになっている。にもかかわらず、ロシアのウクライナ侵略戦争で商品価格の上昇に拍車がかかり、名目賃金の上昇率は高まるインフレ率を依然はるかに下回っている。2022年は名目上の協約賃金(negotiated wage)をインフレーションがはるかに上回ると予測されるため、2022年の間は実質賃金は引き続き下落するとみられる。
若者は、新型コロナウィルス危機初めの惨禍で特に影響を受けた。2022年第1四半期までに若者はOECDの加盟国の間では総じて労働市場における失地の多くを回復したが、年長者に比べると依然として遅れをとっている。15-24歳の就業率はOECDの大半の国で危機以前の水準を下回っており、OECD平均では2019年第1四半期の就業率とちょうど同水準であった。対照的に、25-54歳と55-64歳の年長者の間では就業率はそれぞれ同時期に1ポイントと3ポイント上昇している。